研究概要

再生可能エネルギー技術の価値評価と導入戦略のための基盤構築

再生可能エネルギー技術の導入は、温室効果ガスの削減の環境価値だけではなく、雇用創出や地域活性化などの社会経済価値が期待されています。加えて福島の原発事故を契機にエネルギーシステムの変革が求められ、再生可能エネルギー技術には強い期待が寄せられています。しかし、闇雲に導入量を増やすのではなく、各技術の特性を把握した上で、それが生み出す正負の価値と導入コストのバランスを十分に考慮して、長期的な視点に立って導入を進めることが重要です。再生可能エネルギーの導入は目的ではなく、持続可能な社会の構築に向けた手段なのです。環境と経済の好循環を可能とする、再生可能エネルギー技術の合理的な導入戦略を策定することが、いま求められています。

再生可能エネルギー技術と一言で言っても、太陽光発電や風力発電、バイオ燃料など、各技術の特性は大きく異なります。また、再生可能エネルギー技術の特徴は、大規模な火力発電や原子力発電などと異なり、様々な地域に広く薄く導入されることにあります。それ故に、合理的な導入戦略を策定するためには、ある技術を、ある地域へ導入したときに、如何なる環境影響そして社会経済影響がもたらされるのかを的確に推計し評価する必要があります。つまり、戦略策定にあたり、技術の特性と地域の特性(自然・社会)の両面を十分に考慮することが求められます。

本研究の目的は、国や地域における再生可能エネルギー技術の導入戦略を策定するための科学的な評価基盤を構築し、特定地域における導入戦略を対象としたケーススタディを実施しその有効性を確認することです。構築する評価基盤は、(1) 技術導入に伴うライフサイクル環境・社会経済影響(温室効果ガス排出、雇用創出など)を多面的に推計可能とする客観的な情報基盤と、(2)それらの推計値に基づき意思決定者の選好を反映した導入戦略の策定を支援する主観的な評価システムで構成されます。

国・地域における再エネ技術導入戦略のための評価基盤を構築する 地域の導入策定を通して、トップダウン型とボトムアップ方のバランスのとれた再生可能エネルギー技術導入政策の立案に貢献する

図 本研究プロジェクトの全体像

(1) 客観的な情報基盤の構築

既存の産業連関表を母体として、再生可能エネルギー技術(太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマス)に関連する部門を細分化および組み替えた再生可能エネルギー部門拡張産業連関表(以下、再エネ拡張IO表)を構築します。その上で、再エネ拡張IO表を用いてLCA的に、国および地域における再生可能エネルギー技術の導入に伴う環境・社会経済影響を推計する手法を開発します。

(2) 主観的な評価システムの提案

地域レベルにおいて、上述の再エネ拡張IO表に基づく方法によって得られる推計結果を活用し、再生可能エネルギー導入戦略の立案・選択過程を支援するためのグループ意思決定支援システムを提案します。その上で、特定地域において再生可能エネルギー導入戦略策定に関するワークショップを開催し、提案するシステムを適用することでその有効性を検証します。

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